漫画を読んで「匂い」がした経験、ありますか?
焼いた鹿肉の脂の匂い。雪原の冷気。血と硝煙が混じった空気。
漫画を読んでるだけなのに、五感が引っ張られる経験って、そうそうない。ゴールデンカムイは、読む行為じゃなくて「体験する」に近い。ページを開いた瞬間から、明治末期の北海道にぶち込まれる。
正直、最初は「歴史漫画かぁ、堅そう」と思った。でもそんな先入観は第1巻の中盤で粉砕される。なぜか?アクションと飯テロとギャグが同居してるから。しかも全部のクオリティが高い。この作品が完結した今だから言えるけど、これは令和の漫画史に残る1本だと思ってる。
ゴールドラッシュ×アイヌ×死刑囚 ── 聞いたことない組み合わせ
物語の舞台は日露戦争直後の北海道。
主人公の杉元佐一は、戦場で「不死身の杉元」と呼ばれた元兵士。ある目的のために大金が必要になり、アイヌが隠した莫大な埋蔵金を追うことになる。手がかりは、脱獄した死刑囚たちの体に彫られた刺青の暗号。それを全員分集めないと、金塊の在り処は分からない。
ここでアイヌの少女アシㇼパと出会い、二人で埋蔵金レースに参戦する。だが同じ金塊を狙うのは杉元たちだけじゃない。大日本帝国陸軍の鶴見中尉、そして土方歳三率いる一派も動いている。
設定だけで飯が三杯食える。歴史×サバイバル×宝探し×アイヌ文化。この四つが一作品に共存してるのが信じられないし、しかもそれが全部ちゃんと面白い。
読んだ後に残るもの ── 知識と感情と、異常な食欲
この作品を読んだ後の自分の変化が面白かった。まず、アイヌ文化に興味が出る。チタタプって何?オハウって美味いの?キロランケってどういう意味?気づいたら自分で調べてた。
漫画が知識欲に火をつけるって、なかなかない体験だ。
そして感情面。杉元とアシㇼパの関係が、巻が進むにつれてじわじわと深くなっていく。最初は「大人と子供のバディもの」だったのが、気づけば互いの人生を背負い合う関係になっている。ここの描き方が上手すぎて、終盤はマジで泣いた。
さらに食欲。野田サトルの描く飯シーンは反則だ。脳みそとか目玉とか、普通なら「うっ」となる食材を、読んだら「ちょっと食べてみたい…」と思わせる。ヒンナヒンナ。
アクション、歴史、グルメ、ギャグ、感動。全部の振れ幅がおかしい。1話の中で戦闘→飯→ギャグ→泣き、が成立してる漫画なんて他にない。
<PR>DMMブックスで読むのが一番手っ取り早い
この作品は試し読みで判断できるタイプと、できないタイプの中間にいる。1巻は「面白そうだな」くらいで、3巻あたりから「これヤバいな」に変わり、10巻以降は「もう戻れない」になる。
でも、最初の数話でこの作品の空気感は十分に伝わる。雪原のリアリティ、杉元の覚悟、アシㇼパの生命力。この三つが刺さったら、あとは勝手に読み進めることになる。
DMMブックスなら試し読みもできるし、完結済みだからまとめ買いで一気読みもできる。全31巻、休日に溶けるには最高の分量だ。
<AD>
杉元とアシㇼパ ── 漫画史に残るバディ
杉元佐一という主人公は、一言で言えば「優しい狂人」だ。
戦場では人を殺しまくった不死身の兵士。でも根っこには、好きだった人を守れなかった後悔がある。だから金が要る。動機が俗っぽいのに、その裏にある感情が重い。このギャップが杉元というキャラの魅力を支えている。
アシㇼパは、年齢に似合わず芯が強い。アイヌの知恵と誇りを持ちながら、新しい時代にも向き合おうとする。「伝統を守る」と「未来を選ぶ」の間で揺れる彼女の姿は、この作品のテーマそのものだ。
この二人の関係が、ゴールデンカムイの本当の核。金塊がどうなったかより、この二人がどこにたどり着くかの方が、読者にとっては重要だった。
こんな人にはハマる、こんな人には合わない
ハマる人:
- 歴史ものが好きだけど、堅苦しいのは嫌な人
- サバイバル・狩猟・飯テロに弱い人
- キャラの濃い群像劇が好きな人
- 完結済みの名作を一気読みしたい人
- 「知らなかった文化」に触れるのが楽しい人
合わない人:
- グロテスクな描写が一切無理な人
- 純粋なバトル漫画だけを求めてる人
- ギャグとシリアスの落差に酔う人
- 31巻は長すぎると感じる人
「面白い漫画」はたくさんある。「替えが利かない漫画」は少ない
ゴールデンカムイは、面白い漫画というカテゴリを超えている。
アイヌ文化をここまで丁寧に描いた商業漫画は他にないし、明治末期の北海道をこのリアリティで描ける作家も他にいない。ジャンルを横断しまくってるのに破綻しない。完結してなお、新しい読者を獲得し続けている。
「面白い漫画」なら毎クール出てくる。でも「この作品の代わりはない」と言える漫画は、10年に1本あるかないかだ。
ゴールデンカムイは、その1本。読んでないなら、損してる。

